2020/12/21
蘭は世界に700属以上15,000種もあり独特の形の花を咲かせることから鑑賞価値が高いものが多く、栽培や品種改良が進められています。
一方では絶滅にひんしている種も少なくないことから、ワシントン条約(CITES)で輸出を管理されています。
ここではフラスコ入り蘭の苗の輸入手続きについて説明致します。
1.蘭の苗(フラスコ入り)とは
その名の通り、フラスコに入った蘭の苗です。
蘭の種をフラスコ内に撒き、無菌状態のまま発芽させます。
フラスコ内は無菌状態が維持されており、カビの発生などを防ぎます。
外気に触れないので、保存及び輸送に適したパッケージと言えます。
2.知っておくべきこと
✍ ワシントン条約
フラスコ入の蘭の苗は明らかに人工繁殖であるため、CITES輸出証明書(通称:サイテス)は不要です。
しかし蘭(花)はワシントン条約の対象となっており、輸入にはCITES輸出証明書が必要になります。
蘭(花)と苗では必要書類が異なりますので、注意しましょう。
✍無菌状態の維持
フラスコ入りの蘭の苗は非常にデリケートです。
フラスコにヒビが入っていたりすると、すぐにカビが生えてダメになってしまします。
また、直射日光に当てないようにするなど、輸送には注意が必要です。
輸入の際には植物検疫検査が必要ですが、輸出国側でも検査が必要になります。
輸出国から輸入国までの輸送は取扱実績のある、かつ信頼の置ける輸送業者を選定するようにしましょう。
✍温度管理
フラスコに入っているとはいえ、植物ですので温度管理が重要です。
蘭は比較的温かい国(台湾・タイ・ベトナム等)で栽培されますので、温度もその国に合わせた温度管理が理想です。
急激な温度変化が品質に影響を与えるため、できるだけ一定の温度で輸送するのが望ましいです。
輸出国側での温度管理、輸入国側での温度管理が必要です。
ですので、植物輸送の実績のある国際輸送業者を選定しましょう。
成田空港は冷蔵庫設備を備えています。
❏温度帯
冷蔵庫:-20℃ ・ 冷蔵庫:+5℃ ・ 中温庫:+15℃~19℃ ・ 定温庫+1℃~20℃ 他
※植物は一般的には中温庫・定温庫に蔵置します。
※空港によって冷蔵庫設備は異なります。
到着時の気温を考慮し、到着後に冷蔵庫に蔵置するなどの手配が必要になります。
休日に到着した場合などを想定し、年中無休の通関業者を選びましょう。
3.必要書類の確認
通関に必要な書類は以下のとおりです。
- インボイス・パッキングリスト:輸出者が作成
- 植物検疫証明書(PHYTOSANITARY CERTIFICATE):輸出者が作成
- AWB:現地フォワダーが発行
4.輸入通関「植物検疫申請及び検査」
蘭の苗は植物ですので、植物検疫所へ申請及び検査が必要です。
✍植物検疫申請に必要な書類
- インボイスもしくはパッキングリスト:輸出者が作成
- 植物検疫証明書(PHYTOSANITARY CERTIFICATE):輸出者が作成
- AWB:現地フォワダーが発行
✍申請及び検査の流れ
必要書類をもとに植物検疫申請書を作成し植物検疫所に申請します。
貨物の搬入確認がとれたら植物検疫所の検査場にて現物検査を受けます。
検査では植物防疫所の植防官が害虫の付着が無いか目視検査をします。
※フラスコの中は土が無く、無菌状態なのでフラスコを開けずに植物検疫の検査をします。
害虫の付着が無い場合は植物検査合格証明書が発行されます。
注意!!
検査は到着港で行わねばならないため、保税運送ができませんので注意が必要です。
例えば、成田空港経由で福岡空港に輸送する場合、成田空港で苗が止まってしまいます。
成田空港で植物検疫所へ申請及び検査をし、合格すれば福岡空港への輸送を再開できます。
5.輸入通関「税関申告」
✍HSコード
ランの苗:0602.90-090
✍関税
FREEです。
✍輸入申告に必要な書類
- インボイス・パッキングリスト:輸出者が作成
- AWB:現地フォワダーが発行
税関へ『植物検査合格証明書』を添えて申告。
審査が終了し輸入関税・消費税を支払うと輸入許可となり貨物を引き取ることができます。
6.おまけ
✍苗の取り出し方
フラスコから苗を取り出すとき、注意が必要です。
培地内で根が互いに絡み合っていて、長いピンセット等での苗を取り出すのが難しい場合、ピンセット等で葉を引っ張って出そうとすることは厳禁です。
必ず葉が切れてしまいます。
株の根元を挟んで取り出すことが必要で固くて取り出しできない場合は容器を割って取り出します。
取り出した苗はシャワーで根を中心に培地を洗い流します。
✍ワシントン条約
フラスコ入りの苗はワシントン条約の対象ではありませんが、蘭(花)は対象植物です。
蘭を取り扱う商社として、条約違反をしないために知っておきましょう。
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