動物の輸入方法(生きた爬虫類)

爬虫類の写真

「生きた爬虫類」の輸入は事前確認・準備がとても重要です。

経済産業省や厚生労働省、環境省のHPにも詳しく記載がありますが、そこには「爬虫類」という括りはなく、家畜の輸入全般が記載されているため膨大な情報量となっている上、情報が省庁ごとに分断されています。

このページでは、「生きた爬虫類」部分を抜粋・集約し、わかりやすく解説していますので、輸入を検討している方は是非参考にしてください。

 1.爬虫類について 

✍爬虫類の種類

現在、爬虫類は4つの目に分類されています。

❏ムカシトカゲ目【Sphenodontia】:2種(ニュージランド)

❏ワニ目【Crocodilia】:23種

❏カメ目【Testudines】:約500種

❏有鱗目(ゆうりんもく)【Squamata】

  • トカゲ亜目【Sauria】:4000種以上
  • ヘビ亜目 【Serpentes】:3000種以上
  • ミミズトカゲ亜目【Amphisbaenia】:約160種

✍爬虫類の輸入動向

爬虫類の種類別に個体数と輸入金額の推移をグラフにしました。

※ムシトカゲ目、ワニ目は数量が少ないため、グラフから割愛しました。

以下、全ての表とグラフはクリックすると拡大表示されます。

❏爬虫類輸入統計【輸入金額】 2014年~2022年

輸入金額は各種、右肩上がりです。

後半は円安の影響もあると思います。

❏爬虫類輸入統計【輸入数量】2014年~2022年

数量に関しては、特にトカゲ亜目が急激に増えています。

円安の影響を受けてなお、輸入数量は急増しているので、爬虫類市場は拡大中と言えそうです。

 2.日本到着前の作業 

輸入することが決まりましたら、輸入をする前に下記の確認をしましょう。

✍ワシントン条約の確認

輸入しようとしている爬虫類がワシントン条約の対象となっているかどうかを事前に確認しましょう。

もし対象になっている場合は、附属書のクラス(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)ごとの輸入条件を事前にクリアしなければなりません。

ワシントン条約は、自然のかけがえのない一部をなす野生動植物の特定の種が過度に国際取引に利用されることのないようこれらの種を保護することを目的とした条約です。

この条約は、絶滅のおそれがあり保護が必要と考えられる野生動植物を附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの3つに区分し、附属書に掲載された種についてそれぞれの必要性に応じて国際取引の規制を行うこととしています。

附属書Ⅰ 附属書Ⅱ 附属書Ⅲ
記載基準 絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けている又は受けるおそれのあるもの 現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれのあるもの 締約国が自国内の保護のため、他の締約国・地域の協力を必要とするもの
規制内容
  • 商業目的の取引は可能
    手続き方法
  • 《CITES輸出許可書等》が必要
  • 事前確認が必要
  • 商業目的の取引は可能
    手続き方法
  • 《CITES輸出許可書等》又は
    《原産地証明書等》が必要
  • 事前確認が必要

表中の書類の発行・発給元は次のとおりです。

書類名 発行・発給元
CITES輸出許可書等 輸出国政府
輸入承認証 日本の経済産業大臣
原産地証明書等 輸出国の政府発行機関

上記を踏まえて、「生きた爬虫類」について以下にまとめます。

まずは「学名」を確認しましょう。

下記のリストにその「学名」が記載されている場合、附属書に合わせて手続きをしなければなりません。

※リストは抜粋になります。

※全リストはこちらをご確認ください→ワシントン条約附属書(動物界)

条約内容は随時更新されますので、輸入前にかならず経済産業省に確認しましょう。

経済産業省 ワシントン条約HPはこちら

❏ムカシトカゲ目:RHYNCHOCEPHALIA詳細▼

SPHENODONTIDAE〈ムカシトカゲ科〉 Tuatara(ムカシトカゲ)
品種名
学名
英名 附属書 商用輸入可否
輸入条件
ムカシトカゲ属全種
Sphenodon spp.
  • Tuataras
原則商業取引禁止

▲ 表を閉じる ▲

❏ワニ目:CROCODYLIA詳細▼

CROCODYLIA《ワニ目》
Alligators, caimans, crocodiles(アリゲーター類、カイマン類、クロコダイル類)
詳細▼
ALLIGATORIDAE〈アリゲーター科〉
Alligators, caimans(アリゲーター類、カイマン類)
詳細▼
CROCODYLIDAE〈クロコダイル科〉 Crocodiles(クロコダイル類) 詳細▼

▲ 表を閉じる ▲

❏カメ目:TESTUDINES詳細▼

CARETTOCHELYIDAE〈スッポンモドキ科〉 Pig-nosed turtles(スッポンモドキ類) 詳細▼
CHELIDAE〈ヘビクビガメ科〉
Roti snake-necked turtle, Western swamp tortoise(マッコードナガクビガメ、オーストラリアヌマガメモドキ)
詳細▼
CHELONIIDAE〈ウミガメ科〉 Sea turtles(ウミガメ類) 詳細▼
CHELYDRIDAE 〈カミツキガメ科〉 Snapping turtles(カミツキガメ類) 詳細▼
DERMATEMYDIDAE〈カワガメ科〉 Central American river turtles(カワガメ) 詳細▼
DERMOCHELYIDAE〈オサガメ科〉 Leatherback turtles(オサガメ) 詳細▼
EMYDIDAE〈ヌマガメ科〉 Box turtles, freshwater turtles(ハコガメ類、淡水ガメ類) 詳細▼
GEOEMYDIDAE〈イシガメ科〉 Box turtles, freshwater turtles(ハコガメ類、淡水ガメ類) 詳細▼
KINOSTERNIDAE〈ドロガメ科〉Mud turtles(ドロガメ類) 詳細▼
PLATYSTERNIDAE〈オオアタマガメ科〉 Big-headed turtle(オオアタマガメ) 詳細▼
PODOCNEMIDIDAE〈ヨコクビガメ科〉 Afro-American side-necked turtles(ヨコクビガメ類) 詳細▼
TESTUDINIDAE〈リクガメ科〉 Tortoises(リクガメ類) 詳細▼
TRIONYCHIDAE〈スッポン科〉 Softshell turtles (スッポン類) 詳細▼

▲ 表を閉じる ▲

❏トカゲ亜目:SAURIA(有鱗目)詳細▼

AGAMIDAE〈アガマ科(キノボリトカゲ科)〉 Spiny-tailed lizards, agamas 詳細▼
CHAMAELEONIDAE〈カメレオン科〉 Chameleons(カメレオン類) 詳細▼
CORDYLIDAE〈ヨロイトカゲ科(ウロコトカゲ科)〉 Spiny-tailed lizards(ヨロイトカゲ類) 詳細▼
EUBLEPHARIDAE〈トカゲモドキ科〉 Eyelid geckos 詳細▼
GEKKONIDAE〈ヤモリ科〉 Geckos(ヤモリ類) 詳細▼
HELODERMATIDAE〈ドクトカゲ科〉 Beaded lizard, Gila monster(ドクトカゲ、アメリカドクトカゲ) 詳細▼
IGUANIDAE〈イグアナ科〉 Iguanas(イグアナ類) 詳細▼
LACERTIDAE〈カナヘビ科〉 Lizards(トカゲ類) 詳細▼
LANTHANOTIDAE〈ミミナシトカゲ科〉 Earless monitor lizards(ミミナシトカゲ類) 詳細▼
PHRYNOSOMATIDAE〈 ツノトカゲ科 〉 Horned lizards 詳細▼
POLYCHROTIDAE〈 アノールトカゲ科〉 Anoles 詳細▼
SCINCIDAE〈スキンク科〉 Solomon Islands giant skink(ソロモンオオマキトカゲ) 詳細▼
TEIIDAE〈チュー科(テグトカゲ科)〉 Caiman lizards, tegu lizards(カイマントカゲ類、テグトカゲ類) 詳細▼
VARANIDAE〈オオトカゲ科〉 Monitor lizards(オオトカゲ類) 詳細▼
XENOSAURIDAE〈ワニトカゲ科〉 Chinese crocodile lizard(シナワニトカゲ類) 詳細▼

▲ 表を閉じる ▲

❏ヘビ亜目:SERPENTES(有鱗目)詳細▼

BOIDAE〈ボア科〉 Boas(ボア類) 詳細▼
BOLYERIIDAE〈ツメナシボア科〉 Round Island boas(ボリエリアボア類) 詳細▼
COLUBRIDAE〈ナミヘビ科〉 Typical snakes, water snakes, whipsnakes(ヘビ類、ミズヘビ類、ムチヘビ類) 詳細▼
ELAPIDAE〈コブラ科〉 Cobras, coral snakes(コブラ類、サンゴヘビ類) 詳細▼
LOXOCEMIDAE〈メキシコパイソン科〉 Mexican dwarf boas(メキシコパイソン) 詳細▼
PYTHONIDAE〈ニシキヘビ科〉 Pythons(ニシキヘビ類) 詳細▼
TROPIDOPHIIDAE〈ドワーフボア科〉 Wood boas(モリボア類) 詳細▼
VIPERIDAE〈クサリヘビ科〉 Vipers(クサリヘビ類) 詳細▼

▲ 表を閉じる ▲

✍外来生物法の確認

特定外来生物は輸入が禁止されています。

ただし、あらかじめ学術研究、展示、教育、生業の維持等の目的で飼養等(飼養・栽培・保管・運搬)の許可を受けてることで輸入することができます。

商用での輸入を検討している方は、下記リストの品種に該当した場合、輸入できませんので注意しましょう。

❏特定外来種に該当する爬虫類 全22種

◯カメ目(Testudinata)詳細▼

特定生物 未判定外来生物
カミツキガメ科
Chelydridae
カミツキガメ属
Chelydra
カミツキガメ
C. serpentina
なし
ヌマガメ科
Emydidae
アカミミガメ属
Trachemys
アカミミガメ
(T.scripta)
条件付特定外来生物
※ペットとして飼う場合
手続き不要
なし
イシガメ科
Geoemydidae
イシガメ属
Mauremys
ハナガメ(タイワンハナガメ)
M.sinensis
なし
ハナガメ×ニホンイシガメ
M. sinensis × M. japonica
ハナガメ×ミナミイシガメ
M. sinensis × M. mutica
ハナガメ × クサガメ
M. sinensis × M. reevesii

◯トカゲ亜目(Squamata)詳細▼

特定生物 未判定外来生物
アガマ科
Agamidae
キノボリトカゲ属
Japalura
スウィンホーキノボリトカゲ
J.swinhonis
なし
タテガミトカゲ科
(イグアナ)
Iguanidae
(Polychrotidae)
アノール属
Anolis
アノリス・アルログス
A allogus
アノール属及びノロプス属の全種
※以下の種は除く。
  • アノリス・アルログス
  • アノリス・アルタケウス
  • アノリス・アングスティケプス
  • グリーンアノール
  • ナイトアノール
  • ガーマンアノール
  • アノリス・ホモレキス
  • ブラウンアノール
アノリス・アルタケウス
A. alutaceus
アノリス・アングスティケプス
A. angusticeps
グリーンアノール
A. carolinensis
ナイトアノール
A. equestris
ガーマンアノール
A. garmanni
アノリス・ホモレキス
A. homolechis
ブラウンアノール
A. sagrei

◯ヘビ亜目(Squamata)詳細▼

特定生物 未判定外来生物
ナミヘビ科
Colubridae
オオガシラ属
Boiga
ミドリオオガシラ
B. cyanea
オオガシラ属の全種
※以下の種を除く。
  • ミドリオオガシラ
  • イヌバオオガシラ
  • マングローブヘビ
  • ミナミオオガシラ
  • ボウシオオガシラ
イヌバオオガシラ
B. cynodon
マングローブヘビ
B. dendrophila
ミナミオオガシラ
B. irregularis
ボウシオオガシラ
B. nigriceps
ナメラ属
Elaphe
タイワンスジオ
E. taeniura friesi
スジオナメラ
(E.taeniura)
※以下の種を除く。
  • タイワンスジオ
  • サキシマスジオ
    (E.taeniura schmackeri)
クサリヘビ科
Viperidae
ハブ属
Protobothrops
タイワンハブ
P. mucrosquamatus
ハブ属の全種
※以下の種を除く。
  • サキシマハブ
    (P. elegans)
  • ハブ
    (P.flavoviridis)
  • タイワンハブ
    (P.mucrosquamatus)
  • トカラハブ
    (P.tokarensis)

❏特定外来生物の輸入に対応している港

特定外来生物は下記の空港のみで輸入できます。

  • 成田国際空港
  • 中部国際空港
  • 関西国際空港
  • 福岡空港

❏許可の手続き方法

  • 特定外来生物ごとに定められている飼養等の基準に見合った施設を準備
    [施設条件はこちらを参照]
  • 特定外来生物飼養等許可申請書【様式1-A】を作成及び申請
    飼養等許可申請書様式【様式1-A】→Word / PDF / 記載例
  • 申請書類の提出
    所轄の環境省地方環境事務所へ提出
    [地方環境事務所一覧はこちら]
  • 審査
    主務大臣により、各種審査がなされます。
    審査に合格すると《許可書の写し》が交付されます。

❏輸入手続きに関して

輸入通関の際に税関に2種類の書類を提出します。

  • 主務大臣より交付された《許可書の写し》
  • 《種類名証明書》の原本
    ※輸出した国の政府機関が発行

❏未判定外来生物を輸入する場合

輸入しようとしている爬虫類が未判定外来生物に該当する場合、事前に担当大臣に届出をします。

以下の手順となります。

  1. 輸入しようとする未判定外来生物に関する文献などを準備します。
  2. 文献などをもとに《未判定外来生物の輸入又は本邦への輸出届出書》(以降、届出書とします)を作成します。
    届出書ダウンロード
    ※2部作成します。
  3. 文献等の資料と《届出書》2部を環境省に提出
    ◯《届出書》の宛先
    〒100-8975
    東京都千代田区霞が関1-2-2
    環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室
    TEL:03-3581-3351(代表)
  4. 審査
    審査の結果、被害を及ぼすおそれがないと判断された場合は輸入することができます。
    被害を及ぼすおそれがあると判断された場合は、その生物は特定外来生物に指定され、原則として輸入が禁止されます。
    ※《届出書》を提出してから主務大臣が判定をするまでに最長で6ヵ月必要となります。
    ※届出をご検討されている場合は、提出前に、まずは下記窓口に相談しましょう。
     環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室
     TEL:03-3581-3351(代表)

動物が到着する前に確認する作業は以上です。以下到着後の作業について解説します。


 3.輸入通関「税関申告」 

✍必要書類の確認

税関申告に必要な書類は以下のとおりです。

書類名 書類作成者等
AIR WAYBILL(AWB) 航空輸送の場合、海外フォワダーが発行。
SEA WAYBILL 海上輸送の場合、海外フォワダーが発行。
インボイス 輸出者が作成。
パッキングリスト 輸出者が作成。
ARRIVAL NOTICE 海上輸送の場合。
輸送船が到着する直前に日本の船会社が発行。
❏ワシントン条約に該当する場合
《CITES輸出許可書》
 ※必要に応じて
《原産地証明書》
 ※必要に応じて
輸出国政府機関が発行。
❏ワシントン条約に該当する場合
《輸入承認証》
《事前確認書》
輸入者が手配(経済産業省が発行)。
❏特定外来生物法に該当する場合
《許可書の写し》
輸入者が手配(環境省主務大臣が発行)。
❏特定外来生物に該当する場合
《種類名証明書》の原本
輸出国政府機関が発行。

✍関税・HSコード

以下、生きているものが対象です

❏カメ目

 0106.20-010:FREE

❏ワニ目

 0106.20-020:FREE

❏有鱗目(トカゲ亜目)

 0106.20-031:FREE

❏有鱗目(ヘビ亜目、ミミズトカゲ亜目)

 0106.20-039:FREE

❏ワニ目、ムカシトカゲ目

 0106.20-090:FREE

✍税関申告

上記の必要書類をもとに《輸入申告書》を作成し、必要書類を添付して税関に申告します。

審査が終了し輸入関税・消費税を納税すると輸入許可となり動物を引き取ることができます。

トラックでの当日配送も可能ですが、輸送時間があまりに長時間となる遠方のお客様は、空港までお迎えになることをお勧めします。

事前準備が整いましたら、是非とも弊社へご依頼ください。

 4.まとめ 

爬虫類の輸入は、事前の確認及び準備が重要です。

まずは学名を確認し、「ワシントン条約」「特定外来生物法」に該当するか否かを確認しましょう。

事前の確認及び準備は輸入者が進めていかねばなりませんが、日本到着後の輸入通関に関しては通関業者が代行可能です。

今後継続的に商売として輸入を検討されている方で、進め方に不安や不明点がある方は国際物流コンサルティングサービスをご検討ください。

アクセス・ジャパンではその不安を一緒に解消しつつ、輸入貿易を成功に導くノウハウをお伝えします。

まずは無料のヒアリングから行いますのでお気軽にご相談ください。

コンサルティングの詳細はこちら

 お問い合わせはこちら 

些細なことでも構いません。
お気軽にお問い合わせください。

個人用ボタン
法人用ボタン
悩み相談ボタン