リチウムイオン電池の輸出方法(航空輸送編)

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リチウムイオン電池の航空輸出に必要な手続きを徹底解説!

PI番号ごとの梱包ルールやSDS等の書類準備、EPA活用まで。

ミスの許されない危険物輸送の実務を、わかりやすく解説します。

 1.はじめに 

リチウムイオン電池の世界市場は、電気自動車(EV)の普及と再生可能エネルギー向けの蓄電池需要を背景に、極めて高い成長を続けています。

2025年の市場規模は約1,130億〜1,200億米ドルと推定されています。

今後も高い成長率を維持し、2030年には3,000億米ドル(約45兆円)規模に達するとの見方が有力です。

主な要因: EVシフトの加速に加え、太陽光・風力発電の導入拡大に伴う定置用蓄電池(ESS)の急増が市場を牽引しています。

 2.リチウムイオン電池の輸出動向 

輸出額の増加: 2024年のリチウムイオン電池輸出額(名古屋税関管内など)は過去最高を記録しました。

特に名古屋税関管内は、車載用電池の出荷増を背景に、全国の税関別シェアで初めて第1位となっています。

主要な輸出先: 最大の輸出相手国はアメリカ(米国)です。

日本からの輸出の約7割が米国向けという統計もあり、特に電気自動車(EV)用バッテリーの需要が牽引しています。

用途の変化: スマートフォン等の「小型民生用」は減少傾向にありますが、EVやハイブリッド車向けの「大型車載用」がそれを補って余りある成長を見せています。

 3.商品パッケージごとの注意事項 

2026年6月時点における注意事項は次のとおりです。

リチウムイオン電池は商品パッケージの形態によって輸送方法が変わるため、商品パッケージごとにまとめました。

以下「DGR」とは危険物規則(Dangerous Goods Regulations)を指します。

❏電池のみ詳細▼

ワット時定格値 単電池の場合:1個あたりのワット時定格値が20Whを超えるか?
組電池の場合:1個あたりのワット時定格値が100Whを超えるか?
超える↓ 超えない↓
PI番号/
国連番号/
Section
PI965 / UN3480 / ⅠA PI965 / UN3480 / ⅠB
1包装物あたりの正味量 35kg 10kg
容器 包装等級Ⅱの要件を満たす国連規格容器

1.電池を収納する包装物は1.2mの落下試験に合格した容器
※国連規格容器でなくてよい

2.包装物の上に同一の物を(*)高さ3mまで積み重ねた時の合計重量と同じ力を上部の表面に24時間加えても電池の損傷がなく、容器の有効性も減じないこと。
*テストの為のサンプルを含む

■共通事項

充電率 定格容量の30%まで
危険物申告書 必要
異なる危険物との同梱 DGRの区分1.4Sを除く分類1、区分2.1、分類3、区分4.1、または区分5.1の危険物と同じ外装容器に収納してはならない。
オーバーパック
(輸送用梱包)

1.DGR第5章、第7章に記されたオーバーパックの要件を満たす必要がある。

2.区分1.4Sを除く分類1、区分2.1、分類3、区分4.1、または区分5.1の危険物を含む包装物と同じオーバーパックの中に置いてはならない。

備考 旅客機での輸送は禁止

❏機器と電池が同梱詳細▼
(デジカメと予備バッテリーなど)

ワット時定格値 単電池の場合:1個あたりのワット時定格値が20Whを超えるか?
組電池の場合:1個あたりのワット時定格値が100Whを超えるか?
超える↓ 超えない↓
PI番号/
国連番号/
Section
PI966 / UN3481 / Ⅰ PI966 / UN3481 / Ⅱ
1包装物あたりの電池の個数 機器を使用するのに必要な個数に加え、予備電池が2組まで。
さらに1包装物あたりの電池の正味量は次のとおり。
・旅客機の場合:5kg
・貨物機の場合:35kg
機器を使用するのに必要な個数に加え、予備電池が2組まで。
さらに1包装物あたりの電池の正味量は次のとおり。
・旅客機の場合:5kg
・貨物機の場合:5kg
容器

以下のどちらかに該当する国連規格容器

1.電池を内装容器に完全に入れ、それを包装等級Ⅱの性能基準を満たす容器に収納した上で機器と同梱して強く頑丈な外装容器に収納する。

2.電池を内装容器に完全に入れてから、機器と共に包装等級Ⅱの性能基準を満たす容器に収納する。

1.電池を収納する包装物は1.2mの落下試験に合格した容器
※国連規格容器でなくてよい

2.包装物の上に同一の物を(*)高さ3mまで積み重ねた時の合計重量と同じ力を上部の表面に24時間加えても電池の損傷がなく、容器の有効性も減じないこと。
*テストの為のサンプルを含む

3.電池をDGR5章が定める梱包要件を満たす容器に完全に入れ、その上で機器と共に強固な外装容器に収納する。
または電池を内装容器に完全に入れ、機器と共にDGR5章が定める梱包要件を満たす強固な外装容器に収納する。

充電率 定格容量の30%まで 定格容量の30%まで
※ワット時定格値が2.7Wh以下の場合は推奨要件
危険物申告書 必要 不要
オーバーパック
(輸送用梱包)
DGR第5章、第7章に記されたオーバーパックの要件を満たす必要がある。

1.DGR第5章、第7章に記されたオーバーパックの要件を満たす必要がある。

2.(1)包装物はオーバーパックの中で固定する。
(2)それぞれの包装物の意図された機能はオーバーパックによって損なわれてはならない。

❏電池が機器に組み込まれている詳細▼
(ノートパソコンなど)

ワット時定格値 単電池の場合:1個あたりのワット時定格値が20Whを超えるか?
組電池の場合:1個あたりのワット時定格値が100Whを超えるか?
超える↓ 超えない↓
PI番号/
国連番号/
Section
PI967 / UN3481 / Ⅰ PI967 / UN3481 / Ⅱ
1包装物あたりの電池の正味量 ・旅客機の場合:5kg
・貨物機の場合:35kg
・旅客機の場合:5kg
・貨物機の場合:5kg
危険物申告書 必要 不要
オーバーパック
(輸送用梱包)
DGR第5章、第7章に記されたオーバーパックの要件を満たす必要がある。

1.DGR第5章、第7章に記されたオーバーパックの要件を満たす必要がある。

2.(1)包装物はオーバーパックの中で固定する。
(2)それぞれの包装物の意図された機能はオーバーパックによって損なわれてはならない。

■共通事項

容器 包装物の上に同一の物を(*)高さ3mまで積み重ねた時の合計重量と同じ力を上部の表面に24時間加えても電池の損傷がなく、容器の有効性も減じないこと。
*テストの為のサンプルを含む
※国連規格容器でなくてよい
充電率 定格容量の30%まで、または表示された電池の容量の25%まで

オーバーパック(輸送用梱包)は規定が複雑であるため、梱包会社やフォワーダーに依頼した方が良いと思います。

 4.危険品申告書の作成 

3.商品パッケージごとの注意事項」において、危険品申告書が必要な場合、書類を作成します。

フォーマットのダウンロードはこちら

必要事項を記入の上、サインをし、原本を航空会社に郵送します。

郵送先住所はフォワダーに指示を仰いでください。

 5.輸出に必要な書類 

輸出通関に必要な書類は以下のとおりです。

書類名 書類作成者等
インボイス 輸出者が作成。
インコタームズ、商品名、学名、個数、単価、金額、合計金額を記載。
パッキングリスト 輸出者が作成。
商品名、材質、個数、重量を記載。
EPA書類 必要に応じて輸出者が作成。日本商工会議所が発行。
原産地証明書 必要に応じて輸出者が作成。各地の商工会議所が発行。
危険品申告書 必要に応じて輸出者が作成。
SDS
(安全データシート)
メーカーが発行。
※危険品・非危険品の判別、および梱包やトラブル時の取り扱い方法を航空会社(フォワーダー)が確認するために必ず提出を求められます。
リチウム電池テストサマリー メーカーが発行。
国連勧告の試験基準(UN38.3テスト)に合格していることを証明する書類です。
2020年以降、サプライチェーンの各業者に提供することが国際ルール(IATA航空危険物規則書)で義務化されています。
積み重ね試験結果 メーカーが発行。
場合により必須になり、電池単体や特定の危険物梱包(UN容器など)で発送する場合、梱包が航空輸送の圧力や積み重ねに耐えられるかを示す試験結果の提示を求められることがあります

※インボイスとパッキングリストは情報が重複する部分が多いので「INVOICE&PACKING LIST」として内容を1枚に集約しても構いません。

 6.輸出通関「税関申告」 

✍輸出HSコード ※2026年1月

■リチウムイオン蓄電池:8507.60-000

機器と電池が同梱されている場合や、電池が機器に組み込まれている場合は、機器のHSコードが適用されます。

 7.経済連携協定(EPA) 

日本のリチウムイオン蓄電池は多くの国がEPAの対象となっているため、日本の原産地規則を満たすことで、輸出先国で関税額減少の恩恵を受けられる可能性が高まります。

経済産業省「EPA/FTA/投資協定」特設サイト:日本のEPA活用マニュアルや原産地規則が確認できます。

https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/index.html

 8.まとめ 

リチウムイオン電池は、いまや私たちの生活や産業に欠かせない存在となっており、その需要は今後さらに拡大していくと予想されています。

しかしその半面、世界では粗悪な製品の流通による発火などの深刻な事故が相次いでいるのも事実です。

だからこそ今、世界中の市場で「高い安全性を誇る日本基準の製品」が強く求められているのではないでしょうか。

本記事では、そんな日本の優良な製品を世界へ届ける第一歩として、航空輸送に必要な書類や梱包基準について解説いたしました。

本内容が、皆さまの安全で円滑な輸出ビジネスの一助となれば幸いです。

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